在庫保管や物流業務を外部に任せたいと考えたとき「営業倉庫とは何か」「どのような種類があり、自社に合う倉庫はどれなのか」と悩む方もいるでしょう。
営業倉庫は、倉庫業法に基づき荷主の貨物を預かり、保管や入出庫管理などを行う専門施設で、物流効率化やコスト削減の手段として活用されています。
本記事では、営業倉庫の基本的な定義や法的な位置づけをはじめ、倉庫の種類や特徴、提供されるサービス、利用するメリット、選定時に押さえておきたいポイントまでを解説します。
営業倉庫とは?倉庫業法に基づき荷主の貨物を保管する事業

営業倉庫とは、倉庫業法に基づいて国土交通大臣の登録を受けた事業者が、荷主から預かった貨物の保管や入出庫管理を行う施設です。ここでは、営業倉庫について具体的に解説します。
営業倉庫の定義と法的根拠
営業倉庫は、倉庫業法に基づき国土交通大臣の登録を受けた倉庫業者が、荷主から寄託を受けた貨物を保管し、入出庫管理などを行う施設です。倉庫業法では、寄託を受けた物品の保管を行う営業を「倉庫業」と位置づけ、一定の基準に適合した倉庫で事業を行うことが求められています。
また、倉庫業として登録を受けるには、倉庫の構造・設備が基準を満たしていることに加え、管理体制の整備など所定の要件を満たす必要があります。こうした登録制度により、荷主は一定のルールのもとで貨物を預けられる仕組みになっています。
参考:e-GOV法令検索「倉庫業法」、国土交通省「倉庫業法」
一般倉庫・保税倉庫との違い
営業倉庫は、倉庫業法に基づく登録(=倉庫業としての登録)を受けて、荷主から預かった貨物を有償で保管・管理する点が特徴です。
一方で、事業者が自社貨物を保管する目的で利用する倉庫や、登録を受けずに保管機能のみを担う施設は、事務上「一般倉庫」と呼ばれることがありますが「一般倉庫」という用語は法律上の制度区分として厳密に定義された呼称ではないため、説明では「登録の有無(倉庫業法の対象かどうか)」で整理すると誤解が生じにくくなります。
保税倉庫は、関税法に基づき、輸入貨物等を、関税が確定する前の状態で保管できる施設です。営業倉庫(倉庫業法)とは、適用法令と利用目的が異なるため、国内流通中心か、国際取引(通関)を伴うかで使い分けることが重要です。
営業倉庫は主に国内流通の貨物を対象とするのに対し、保税倉庫は国際取引にかかわる貨物の管理・保管に利用されます。目的や適用法令がそれぞれ異なるため、利用目的に応じた選択が重要です。
営業倉庫登録の申請から許可までの流れ
営業倉庫として事業を行うには、倉庫業法に基づく倉庫業の登録申請が必要です。申請後は、倉庫の構造・設備が基準に適合しているか、管理体制が整っているか等の審査が行われ、要件を満たす場合に登録されます。なお、登録後も継続して事業を行うためには、関係法令に沿った運用・管理を行うことが前提となります。
1、申請
申請者は国土交通省の「倉庫業登録申請の手引き」を参照し、倉庫業登録申請書や倉庫明細書、登記簿謄本(土地・建物)といった必要な申請書類を用意します。
倉庫業登録申請書や倉庫明細書には、倉庫の所在地・保管貨物の種類・設備などの情報を記載して提出しましょう。申請は、管轄の地方運輸局等を通じて行います。
2、審査・登録許可
申請後は、倉庫の構造や管理体制が法令に適合しているかどうか審査されます。審査が完了すると登録が許可され、正式に営業倉庫としての事業を開始できます。
営業倉庫の登録には有効期限による自動的な期限切れはなく、一度登録を受ければ継続的に事業を行えます。ただし、施設・管理体制の維持や期末倉庫使用状況報告書の提出など継続的な法令対応が必要です。
営業倉庫の登録は手間がかかりますが、適切な手続きを踏むことで荷主が安心して貨物を預けられる体制を整えることができます。
営業倉庫の主な種類とその特徴

営業倉庫の主な種類と特徴は、下記の通りです。
| 種類 | 特徴 | 保管対象の例 |
| 1類倉庫 | 防火・防湿など厳格な基準を満たす標準的な建屋型 | ・日用品 ・紙製品 ・機械部品 ・繊維製品 |
| 2類倉庫 | 耐火基準は一類より緩やかだが、防湿・防水性能を備える | ・穀物 ・肥料 ・塩 |
| 3類倉庫 | 比較的簡易構造で、湿気や温度変化に強い物品向け | ・ガラス製品 ・陶磁器 ・金属製品 |
| 貯蔵槽倉庫 | サイロやタンク型の構造液体・粉体を大量保管 | ・穀物 ・糖蜜 |
| 野積倉庫 | 屋外型区画や防犯設備を備える | ・鉱石 ・原木 ・建材 |
| 危険品倉庫 | 可燃物や高圧ガスなどを保管する専用施設 | ・ガソリン ・灯油 ・薬品類 |
| 水面倉庫 | 水面上で木材を保管する特殊形式 | 原木 |
| 冷蔵倉庫 | 常時10℃以下で温度管理 | ・生鮮食品 ・冷凍食品 |
1類・2類・3類倉庫、野積倉庫、貯蔵槽倉庫、危険品倉庫などは、倉庫業法に基づき、保管物の性質や構造・設備基準によって区分されています。
また、冷蔵倉庫(実務上は冷凍倉庫を含む)は、倉庫業法上、常時10℃以下での温度管理が求められる区分であり、食品や医薬品など品質維持が重要な物品の保管に適しています。
危険品倉庫は、消防法をはじめとする関連法令の規制を受けるため、保管物の性質に応じた厳格な安全管理体制が求められます。
営業倉庫の役割と提供サービス

営業倉庫は、単なる貨物の保管場所ではなく、物流業務全般を支える重要な役割を果たしています。ここでは営業倉庫の役割と提供サービスについて解説します。
保管・棚卸・入出庫管理
営業倉庫の基本的な役割は、荷主から預かった貨物を適切な環境で保管することです。貨物の性質に応じて保管方法が管理され、必要に応じて温度や湿度への配慮が行われることで品質の維持が図られます。
また、営業倉庫では棚卸業務も重要な機能の一つです。定期的に在庫数量を確認し、帳簿データと照合することで在庫管理の精度向上につながります。過剰在庫や欠品といったリスクを抑え、安定した在庫運用を行いやすくなります。
入出庫管理においては、貨物の受け入れから出庫までの一連の作業を効率的に行う体制が整えられています。入庫時の数量確認や状態確認、出庫時のピッキングや出荷準備などを正確に行うことで、物流全体のスムーズな運営を支えます。
ラベル貼付・検品などの流通加工
営業倉庫では、流通加工と呼ばれる付加価値サービスを提供しているケースもあります。流通加工とは、商品が出荷される前段階で行われる各種作業を指し、ラベル貼付や検品などが代表的な業務です。
ラベル貼付は、商品情報や管理番号を明確にするために行われ、物流過程における識別性の向上につながります。正確なラベル管理は、在庫管理や出荷ミスの防止に寄与するでしょう。
検品業務では、入庫時に数量や内容が発注内容と一致しているか、外観に問題がないかなどを確認します。
あらかじめ倉庫側で検品を行うことで不良品や誤納品のリスクを抑え、後工程でのトラブルを防ぐ効果が期待されます。特に品質管理が重視される商品を扱う場合には、流通加工サービスの有無や対応範囲も倉庫選定の重要な判断材料となります。
参考:流通業務総合効率化法にどう対応する?企業が取るべき対策と改正内容 | リンオペ
営業倉庫を利用するメリット
営業倉庫を利用することには、さまざまなメリットがあります。ここでは、営業倉庫を利用する主な利点を2つ紹介します。
自社倉庫不要で固定費削減
営業倉庫を利用するメリットの一つは、自社で倉庫を保有・運営する必要がなくなる点です。自社倉庫を持つ場合、土地や建物の取得・維持費に加え人件費や設備投資など継続的なコストが発生します。
一方、営業倉庫を利用することで倉庫スペースや作業量に応じた費用負担となり、固定費を抑えた運用がしやすくなります。
在庫量に応じて利用規模を調整できるため、需要変動の大きい商材を扱う場合でも過剰なスペースを抱えるリスクを軽減できます。繁忙期と閑散期の差が大きい業種にとっては、柔軟な運用が可能になる点もメリットといえるでしょう。
また、倉庫内の管理や入出庫作業を倉庫事業者に任せることで、社内リソースを本業に集中させやすくなります。
専門人材による物流業務の効率化
営業倉庫では、倉庫管理や入出庫業務に精通したスタッフが業務を担当しています。そのため、荷主企業は自社で物流専門人材を確保・育成する負担を抑えながら、一定水準の物流業務を維持しやすくなります。
専門スタッフによって作業手順や管理方法が標準化されているため、入出庫ミスや在庫管理上のトラブルが起こりにくい点も特徴です。
万が一問題が発生した場合でも、経験を持つ担当者が対応する体制が整っていることで、業務への影響を抑えることが期待できます。物流を外部に委ねることで、企業は自社の強みとなる業務に注力できる環境を整えやすくなるでしょう。
営業倉庫を選ぶポイント

営業倉庫を選定する際には、倉庫の種類や立地だけでなく自社の事業内容や取り扱う商品との相性を踏まえて検討することが重要です。ここでは、営業倉庫を選ぶ際に押さえておきたい主なポイントを整理します。
取り扱い貨物・温度帯に合う倉庫を選ぶ
営業倉庫を選ぶ際は、まず自社が取り扱う貨物の種類や必要とされる保管条件に合った倉庫であるかを確認することが重要です。これは、業種や商材によって求められる倉庫機能が大きく異なるためです。
例えば食品を扱う企業では、品質保持の観点から冷蔵・冷凍倉庫の利用が一般的です。生鮮食品や冷凍食品は温度管理が重要となるため、適切な温度帯での保管体制が整っている倉庫を選ぶ必要があります。
化学品を取り扱う企業の場合は、危険物の特性に応じた管理が可能な危険品倉庫が求められます。安全基準や法令への対応が不可欠であるため、専門的な設備や運営体制を備えた倉庫かどうかを確認することが大変重要です。
医薬品関連の企業では、品質や有効性を維持するために温度や湿度の管理が行える倉庫が利用されます。取り扱う製品の特性に応じた管理基準に対応できるかどうかが、倉庫選定のポイントとなります。
また、量販店向けの商品を扱う企業では、普通倉庫に加えてラベル貼付や検品などの流通加工に対応できる倉庫が選ばれることがあります。出荷形態や納品条件に合わせた対応が可能かどうかも、確認しておきたい点です。
リードタイムと輸送費を最適化できる立地を選ぶ
営業倉庫を選ぶ際には、立地条件も重要な判断要素となります。倉庫の所在地はリードタイムや輸送費に影響を与えるため、物流全体を見据えて検討する必要があるでしょう。
例えば、主要な取引先や配送先に近い立地の倉庫を選ぶことで、納品までにかかる時間を短縮しやすくなります。リードタイムの短縮は、在庫回転率の向上や顧客対応力の向上にもつながります。
また、高速道路や港湾、空港などの物流インフラへのアクセスが良好な立地であれば、輸送効率を高めやすく、結果として輸送コストの抑制が期待できます。特に広域配送や長距離輸送が発生する場合には、立地条件の影響が大きくなります。
まとめ
営業倉庫は、倉庫業法に基づき、荷主の貨物を安全に保管・管理する専門施設として、普通倉庫や冷蔵倉庫、危険品倉庫など、取り扱う貨物の特性に応じたさまざまな種類があります。自社の商材や物流要件に合った倉庫を選ぶことが、安定した物流体制の構築につながるでしょう。
また、営業倉庫を利用することで自社倉庫の保有が不要となり、固定費の抑制や専門人材による物流業務の効率化が期待できます。倉庫を選定する際には、取り扱い貨物の特性や温度帯、立地条件、リードタイムや輸送費への影響などを総合的に検討することが重要です。
なお、営業倉庫を安心して利用するためには、倉庫業法に基づく「倉庫業の登録」を受けた事業者であるかどうかも、判断材料の一つとなります。コールドクロスネットワークは、倉庫業法に基づく登録を受けた事業者として、荷主の貨物保管業務に対応しています。