経済的発注量(EOQ)とは、発注費用と在庫保管費用の合計が最小になる発注量を求める考え方です。発注量の設定は欠品と過剰在庫の両方に影響し、リードタイムや発注方式とも密接に関係します。
本記事では、EOQの基本、計算式(ウィルソンの公式)、定期発注方式・定量発注方式との違い、設定のポイントを解説します。
経済的発注量(EOQ)とは

経済的発注量(EOQ:Economic Order Quantity)とは、発注費用と在庫保管費用の合計が、最も小さくなる1回あたりの発注量を求める考え方のことです。
発注を小口で頻繁に行うと発注費用がかさみ、逆に大量にまとめて発注すると在庫を抱える期間が長くなり、保管費用が増えてしまいます。EOQはこの妥協点を数式で整理し、「常にどれくらいの量を発注するのが経済的か」を判断する指標です。
EOQは特に定量発注方式などで固定発注量を設定する際の基準として使われやすい考え方です。実務では、リードタイムを踏まえた発注点や安全在庫と組み合わせて運用することで、欠品や過剰在庫のリスクを抑えながら在庫管理の効率化を図れます。
経済的発注量の計算方法

経済的発注量(EOQ)を計算するには、発注費用と在庫保管費用のコスト構造を理解することが必要です。詳しく見ていきましょう。
発注費用と保管費用のバランス
EOQの根本には、発注費用と在庫保管費用のバランスがあります。発注費用とは、発注処理や発注書類の作成、検品作業、配送手配など、1回の発注に伴って発生する一連のコストを指します。
在庫保管費用は、倉庫賃料や棚卸資産の保険料、保管中の劣化等による損失、人件費など、在庫を保持することで継続的に発生するコストを指します。
発注量が少ないと発注頻度が増え、発注費用がかさみます。逆に大量発注を行うと、在庫を抱える期間が長くなり保管費用が膨らみます。EOQは、発注費用と保管費用の双方を正しく把握して、適切な発注量を設定する第一歩となります。
ウィルソンの公式(計算式)
EOQを算出する際に用いられる代表的な式が「ウィルソンの公式」です。
EOQ=√(2DS/H)
※D:年間需要量、S:1回あたりの発注費用、H:1単位あたりの年間保管費用
(※DとHは年間ベース、Sは1回あたりの費用)
この式のイメージを具体例で見てみましょう。
年間需要量12,000個、発注費用5,000円、保管費用200円とすると、EOQは約775個となります。つまり、1回あたり約775個ずつ発注するのが、最もコスト効率が良い水準です。
この場合、年間発注回数は約15.5回(月1.3回)となり、発注費用と保管費用はそれぞれ約7.75万円、合計で約15.5万円となります。EOQでは、この2つのコストがほぼ均等になるのが特徴です。
一方、発注量を変えるとコストは増加します。例えば、1,000個ずつ発注すると合計16万円、500個ずつでは17万円となり、いずれもEOQより高くなります。
なお、EOQは需要やリードタイムが一定であることを前提としたモデルのため、実務では安全在庫や発注点と組み合わせて運用することが重要です。
計算に必要なパラメータの把握
EOQを正しく算出するためには、基礎パラメータを正確に把握する必要があります。
まず、発注費用(S)は前述のとおり発注時に発生する一回あたりの処理コストを指し、事務処理・交渉・配送手配・検品などが含まれます。
次に、在庫保管費用(H)は倉庫賃料、保険料、保管中の劣化、棚卸作業など、在庫を維持するための継続的なコストが該当します。
年間需要量(D)も欠かせない指標で、どの程度の数量を年間で消費するのかが基準となります。この値が大きいほど、発注量の設定にも影響します。
なお、発注リードタイムはEOQそのものの計算式に含まれませんが、実際の運用では発注点や安全在庫を決める際に不可欠な要素となります。これらのパラメータを把握することで、EOQを現実的な発注量として機能させやすくなります。
定期発注方式と定量発注方式

在庫管理では、発注タイミングを固定する「定期発注方式」と、在庫量が一定値を下回ったときに発注する「定量発注方式」が代表的な手法です。ここでは、それぞれの特徴とEOQとの関係を整理します。
定期発注方式(発注サイクルを固定)
定期発注方式は、月1回・週1回など、一定のサイクルで在庫状況を確認し、その都度必要量を計算して発注する方法です。発注のタイミングが明確なため担当者の作業負担が軽く、発注計画も立てやすくなります。
一方で、発注は在庫量に関係なく行われるため、需要が変動すると過剰在庫や欠品が発生しやすくなる点が課題です。
この方式を運用する際には、リードタイムと需要変動を踏まえて発注サイクルを調整することが欠かせません。
需要が読みにくい商品では、安全在庫を多めに設定し、欠品リスクを抑える必要があります。安定した需要の商材であれば、発注作業の効率化につながりやすい方式です。
定量発注方式(発注量を固定・EOQの活用)
定量発注方式は、在庫量が「発注点」を下回った時点で、あらかじめ設定した数量を発注する方法です。
この一定の発注量にEOQを採用することで、発注費用と在庫保管費用のバランスを取りながら効率的に在庫を補充できます。需要が比較的安定している商品では、欠品リスクを抑えつつ、過剰在庫の発生も防ぎやすい手法です。
ただし、需要の変動が大きい場合は注意が必要です。在庫が予想以上に減ると発注点に早く到達し、発注回数が増える可能性があります。そのため、需要予測の精度向上や、安全在庫の最適化と組み合わせて運用することが大切です。
発注リードタイムを考慮した運用
発注リードタイムは、発注から納品までにかかる時間のことで、実務における在庫管理の要となる要素です。 EOQ自体は発注量を決めるためのモデルですが、実際にいつ発注するかを判断する際には、このリードタイムを必ず考慮する必要があります。
リードタイム中に在庫が不足することを防ぐためには、需要予測に基づいた発注点の設定と、安全在庫の確保が欠かせません。
リードタイムが短縮できない場合は、安全在庫の調整が実質的な運用手段となります。需要変動の大きな商材では、安全在庫を多めに設定し、安定した商品では適正量を見直すことで、過剰在庫を抑えつつ欠品リスクを軽減できます。
適正な経済的発注量を設定する際のポイント

EOQを適正に設定するためには、需要予測、安全在庫、発注単位(ロット)など、実務上の制約を踏まえる必要があります。これらを組み合わせて調整することで、より現実的な発注量に近づけられるでしょう。ポイントを3つ解説します。
需要予測の精度を高める
EOQを実際の業務に活かすためには、まず需要予測の精度を高める必要があります。予測が外れると、必要以上に在庫を抱えたり、逆に欠品を招いたりとどちらもコスト増の原因になります。
需要予測の基本は、過去の販売データから季節性やトレンドを読み取ることです。加えて、市場動向、顧客の動き、販促計画など定性的な情報を取り込むことで、精度はさらに高まります。
変動が大きい商品では、リアルタイムでデータを更新し、予測を随時見直す仕組みも欠かせません。
需要は固定されたものではなく、環境に応じて常に変化します。定期的に予測モデルを点検し実績とのズレを修正していくことが、EOQを運用するうえでの土台となります。
安全在庫との兼ね合いを考える
EOQは「どれだけの量を発注するか」を決める指標であり、欠品リスクに備える安全在庫とは別の概念です。しかし、実務ではこの2つを組み合わせて運用することで、より安定した在庫管理が実現します。
安全在庫は、需要の急増やリードタイムの遅延など、予測だけでは吸収しきれない不確実性に備える緩衝材です。特に、季節変動がある商品や供給に波がある商品では、安全在庫の適正量が安定運用に直結します。
安全在庫は、過去の需要変動幅や納期のばらつきから算出するのが一般的です。EOQだけで決めず、安全在庫と発注点をセットで設計することで、実態に合った補充体系を組み立てられます。
安全在庫と発注点については、下記の記事にて具体的に解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
▶︎安全在庫とは?計算式と必要なデータなどをわかりやすく解説
▶︎発注点とは?計算方法や安全在庫との関係・決め方をわかりやすく解説
積載効率や発注単位(ロット)も考慮する
EOQは理論的な最適発注量を示しますが、現場では「どの単位で発注できるか」という制約が必ず存在します。ケース単位・カートン単位・パレット単位など、サプライヤーごとに発注ロットが決まっており、これを無視してEOQを採用することはできません。
また、輸送や保管の効率も実務上重要な要素です。トラック1台に載せられる量や、パレット1枚に積めるケース数を踏まえて発注すると、運賃や保管スペースの無駄を抑えられます。
ロットが大きすぎると過剰在庫になり、小さすぎると発注回数が増えて費用がかさむため、両者のバランスを見ながら調整します。
EOQに実務上の制約を重ね合わせることで、コストと現場運用の両立が可能になるでしょう。
まとめ
本記事では、EOQの考え方や計算方法、定期発注方式と定量発注方式の使い分け、需要予測や安全在庫との組み合わせ方など、実務で押さえておきたいポイントを整理しました。
経済的発注量(EOQ)は、発注費用と在庫保管費用のバランスを見極め、欠品と過剰在庫の双方を防ぐための基本となる指標です。
在庫量や保管スペースの見直しが必要な場合には、経済的発注量や安全在庫の視点を踏まえ、フレキシブルにご利用いただける保管サービス「コールドクロスネットワーク」の活用を検討してみてください。
編集・監修
コールドクロスネットワーク編集部
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高田 直樹
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鈴木 邦成
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