冷凍倉庫は、食品や医薬品などの品質を保つために不可欠ですが、その費用はさまざまな要因によって変動します。倉庫の立地や設備、契約形態によってコストが大きく異なるため、適切な倉庫選びが重要です。
本記事では、冷凍倉庫の費用相場や選び方のポイント、コストを抑える方法について解説します。冷凍倉庫を利用する際のコスト構造を理解し、最適な倉庫を選ぶための参考にしてください。
冷凍倉庫の費用と相場

冷凍倉庫の費用は、さまざまな要因によって変動しますが、主に倉庫保管料、システム利用料、人件費、電気料金、その他の変動費が含まれます。これらの要素を理解することで、冷凍倉庫のコスト構造を把握し、適切な倉庫選びが可能になります。ここでは、各項目別に費用と相場について説明します。
倉庫保管料
冷凍倉庫を利用する際に必要となるのが倉庫保管料です。この保管料は、保管する商品の種類や量、倉庫の立地、さらには契約形態によって異なります。具体的には、以下のような単価が設定されることが一般的です。
パレット単価
冷凍倉庫におけるパレット単価は、保管する商品の種類や数量、倉庫の立地条件によって大きく異なります。一般的に、パレット単価は1パレットあたりの保管料として設定され、冷凍倉庫の利用においては温度管理が必要なため、通常の倉庫よりもコストが高くなる傾向があります。
パレット単価は、常温保管の商品の場合1パレットあたりの相場が月額2,000円~3,000円です。冷凍倉庫の場合は、保管料が倍近くになることもあります。また、保管する商品のサイズや重量、さらには保管期間によっても単価は変動します。長期間の保管が必要な場合は割引が適用されることもありますが、逆に短期間での利用では割高になることも考えられます。
さらに、倉庫の運営会社によっては、パレット単価に加えて、入庫や出庫の手数料が発生することもあるため、契約前に詳細を確認することが重要です。
坪単価
坪単価とは、倉庫の面積に対する保管料を示すもので、通常は1坪あたりの料金として設定されています。この単価は、倉庫の立地や設備、保管する商品の特性によって大きく異なるため、事前にしっかりと調査することが求められます。
冷凍倉庫の坪単価は、月額4,000円~7,000円程度になることが多いようです。このほか、都市部に位置する冷凍倉庫は坪単価が高くなる傾向があります。これは、交通の便が良く、需要が高いためです。一方、郊外や地方にある倉庫は坪単価が比較的安価であることが多いものの、ですが、配送コストや時間がかかる可能性も考慮する必要があります。
また、坪単価は契約形態によっても変動します。冷凍倉庫の設備や温度管理の精度によっても坪単価は影響を受けるため、選択肢を比較検討する際にはこれらの要素をしっかりと把握しておくことが重要です。
個建て単価
個建て単価とは、保管する商品一つひとつに対して個別に設定される料金単価です。この料金体系は、特に少量の商品の保管を希望する企業や、特定の商品のみを冷凍倉庫に預けたいと考える企業にとって、非常に有用です。
個建て単価では、保管する商品の個数に基づいて料金を設定します。
保管料 = 保管商品数 × 個建て単価
保管商品数は、1カ月を区切らない1期制と、2つまたは3つの期間に分けて計算する方法があります。2期制と3期制の場合について、それぞれ計算方法を紹介します。
<2期制の計算方法>
2期制では、以下のように1カ月を2つの期に分けて区切って保管商品数を計算します。
第1期: 1日~15日
第2期:16~末日
1カ月の間に期間を区切らない1期制と、3期制の中間を取り入れた計算方法です。
<3期制の計算方法>
以下のように、1カ月を3つの期に分けて保管商品数を計算します。
第1期: 1~10日
第2期: 11~20日
第3期: 21日~末日
例えば、前期末の在庫数が10の場合、第1期の入庫数が3であれば保管商品数は13となります。出庫数は保管商品の計算には含まれません。
保管商品数 = 前期末在庫数 + 今期入庫数
3期制は在庫の変動に対して柔軟に対応できることがメリットです。ただし、管理が煩雑になりやすいため、その点には注意が必要といえます。
容積単価
容積単価とは、保管する商品の体積に基づいて計算される料金であり、通常は立方メートル(m³)単位で設定されます。
容積単価は、容積あたりの単価 × 荷物全体の容積で計算されることが一般的です。倉庫の運営コストや立地条件、設備の充実度などによって異なるため、複数の倉庫を比較することが重要です。
さらに、容積単価は出荷量や保管期間によっても影響を受けるため、長期的な視点でのコスト計算が必要です。例えば、短期間で大量の商品を保管する場合、容積単価が高くてもトータルコストが抑えられることもあります。
重量単価
重量単価とは、保管する商品の重量に基づいて計算される料金であり、商品の重量(kg)×重量単価で求められます。
重量単価は、商品の種類や特性、さらには倉庫の立地によっても変動します。例えば、冷凍食品や生鮮食品など、温度管理が厳密に求められる商品は、一般的に高めの重量単価が設定されることが多くなっています。また、倉庫の運営コストや設備の充実度も、重量単価に影響を与える要因となります。
システム利用料
冷凍倉庫を利用する際には、倉庫保管料だけでなく、システム利用料も考慮する必要があります。システム利用料とは、倉庫の管理システムや在庫管理ソフトウェアを使用するための費用を指します。これらのシステムは、在庫の追跡や出荷の管理を効率化し、業務のスムーズな運営を支援します。
システム利用料は、一般的に月額料金や取引ごとの手数料として設定されることが多く倉庫の規模や提供されるサービスの内容によって異なります。例えば、基本的な在庫管理機能だけを提供するシステムの場合は比較的低コストで利用できる一方、リアルタイムでの在庫状況の把握や、複雑な出荷指示に対応できる高機能なシステムでは、利用料が高くなる傾向があります。
システム利用料には月額料金や年額料金が設定されていることが多くなっています。長期的なコストを見積もる際には、これらの料金体系を理解しておくことが必要です。
荷役料
冷凍倉庫の運営においては、荷役料も重要なコストです。倉庫内での作業は多岐にわたり、入出庫作業や商品検品など、荷役作業全般にかかるコストは、全て荷役料に含まれます。また荷役料には、人件費や設備費などの様々な費用も含まれ、これらの業務を遂行するためには、専門的な知識や技術を持ったスタッフが必要です。そのため、適切な人員配置と労働環境の整備が求められます。
電気料金
冷凍設備を稼働させるためには、常に一定の電力が必要であり、その消費量は倉庫の規模や保管する商品の種類によって大きく異なります。特に、冷凍庫の温度を維持するためには、強力な冷却システムが求められるため、電気料金が高額になることが一般的です。
また、電気料金は地域によっても異なるため、倉庫の立地選びがコストに影響を与える要因となります。例えば、電力供給が安定している地域や、電気料金が比較的安価な地域を選ぶことで、長期的なコスト削減が期待できます。
その他変動費
冷凍倉庫を利用するには、変動費も必要となります。
変動費として、まず輸送費用が挙げられます。倉庫から顧客への配送や、仕入れ先から倉庫への輸送にかかるコストは、距離や運送業者によって異なります。また、季節や需要の変動によっても影響を受けるため、これらの費用を把握しておくことが重要です。
次に、保険料も変動費の一部です。倉庫に保管している商品に対して保険をかけることで、万が一の損失に備えることができますが、保険料は商品の種類や価値、保管場所によって異なります。適切な保険を選ぶことで、リスクを軽減しつつコストを抑えることが可能です。
基本的には倉庫側が保険に加入していることが多いですが、念のため確認しておくことが重要です。
冷凍倉庫を選ぶ時のポイント

冷凍倉庫を選ぶ際には、いくつかの重要なポイントを考慮する必要があります。ここでは8つのポイントをご紹介します。
出荷量の変化に柔軟に対応できるか
冷凍倉庫を選ぶ際に重要なポイントの一つは、出荷量の変化に対する柔軟性です。ビジネスの状況は常に変動しており、季節や需要の変化に応じて出荷量が増減することがあります。そのため、倉庫がこれらの変化に迅速に対応できるかどうかが、コスト効率や業務のスムーズさに大きく影響します。
例えば、繁忙期には一時的に保管スペースが不足することも考えられます。このような場合、倉庫が追加のスペースを迅速に提供できるか、または一時的な契約が可能かどうかを確認することが重要です。逆に、出荷量が減少した際には、無駄なコストを抑えるために、柔軟に契約内容を見直せるかもポイントとなります。
料金とサービス内容が見合っているか
冷凍倉庫を選ぶ際に重要なポイントの一つが、料金と提供されるサービス内容のバランスです。単に安い料金を選ぶだけでは、必要なサービスが欠けている場合があり、結果的にコストがかさむこともあります。例えば、保管料が安い倉庫でも、温度管理や在庫管理の精度が低ければ、商品が劣化してしまうリスクが高まります。
また、サービス内容には、出荷や入庫の手続きの迅速さ、トレーサビリティの確保、さらには緊急時の対応力なども含まれます。これらの要素がしっかりと整っているかどうかを確認することが、長期的なコスト削減につながります。
料金が高い倉庫でも、質の高いサービスを提供している場合は、結果的に安心して利用できるため、トータルコストを抑えることができるかもしれません。
過去の支援実績が豊富か
冷凍倉庫を選ぶ際には、その倉庫業者の過去の支援実績を確認することが重要です。特に、食品や医薬品などの特定の業界に特化した経験があるかどうかは、品質管理や適切な温度管理に直結します。実績が豊富な業者は、さまざまなケースに対応してきた経験があるため、トラブルが発生した際にも迅速かつ適切に対処できる可能性が高くなります。
また、過去の顧客からのフィードバックや評価も参考にすることで、その業者の信頼性やサービスの質を判断する手助けになります。特に、同業種の企業からの推薦や実績は、選定の際の大きな指標となります。
予算内に収まるか
冷凍倉庫を選ぶ際には、予算内に収まるかどうかが非常に重要なポイントです。倉庫の利用料金は、保管する商品の種類や量、契約期間によって大きく変動します。そのため、事前にしっかりと予算を設定し、各倉庫の見積もりを比較することが求められます。
まず、冷凍倉庫の費用には、基本的な保管料の他に、システム利用料や人件費、常温倉庫よりも高額になる電気料金などが含まれます。これらの費用を総合的に考慮し、自社の予算に合った倉庫を選ぶことが必要です。また、契約形態によってもコストが異なるため、長期契約や短期契約のメリット・デメリットを理解し、自社のニーズに最適なプランを選ぶことが重要です。
さらに、冷凍倉庫の選定にあたっては、隠れたコストにも注意が必要です。例えば、追加のオプションサービスや、急な出荷に対応するための費用が発生する場合があります。これらの要素を考慮し、予算内に収まるかどうかをしっかりと確認することで、無駄な出費を抑えることができます。
環境に対して配慮しているか
冷凍倉庫を選ぶ際には、環境への配慮も重要なポイントです。近年、企業の持続可能性が求められる中で、環境に優しい倉庫の選択は、企業のイメージ向上や社会的責任を果たすためにも欠かせません。
具体的には、エネルギー効率の高い冷却システムや再生可能エネルギーの利用、冷媒の選定において環境負荷の少ないものを使用しているかどうかを確認することが大切です。
また、倉庫の運営が環境基準を満たしているか、ISO14001などの環境マネジメントシステムの認証を取得しているかもチェックポイントです。これにより、倉庫が環境保護に対して真剣に取り組んでいることが示され、安心して利用することができます。
さらに、冷凍倉庫の立地選びも環境への影響を考慮する必要があります。交通の便が良い場所に位置することで、輸送時のCO2排出量を削減できるため、環境負荷を軽減することが可能です。
自社に適した立地にあるか
冷凍倉庫を選ぶ際のポイントの一つが、立地です。倉庫の位置は、物流コストや配送効率に大きな影響を与えます。自社の拠点や主要な取引先との距離を考慮し、アクセスの良い場所にある倉庫を選ぶと良いでしょう。特に、冷凍食品や医薬品など、迅速な配送が求められる商品を扱う場合、立地の選定は非常に重要です。
また、立地によっては、交通渋滞や配送の混雑具合も異なるため、これらの要因も考慮する必要があります。例えば、都市部に近い倉庫は利便性が高い一方で、賃料が高くなる傾向があります。一方、郊外の倉庫はコストが抑えられることが多いですが、配送に時間がかかる可能性があります。
さらに、冷凍倉庫の立地は、周辺のインフラやサービスの充実度にも影響されます。例えば、冷凍車両の整備やメンテナンスが容易に行える地域であれば、運営コストを抑えることができるでしょう。
自社製品の保管温度に対応しているか
冷凍倉庫を選ぶ際に重要なポイントの一つが、自社製品の保管温度に対応しているかどうかです。食品や医薬品など、保管する商品によって必要な温度帯は異なります。
倉庫業法施行規則(昭和31年運輸省令第59号)第3条の11において、冷蔵・冷凍倉庫については、冷蔵室の保管温度が常時摂氏10度以下に保たれるものと定められていました。しかし令和6年4月より、保管料の高騰を抑制するとともに、環境負荷の低減を図る観点から従来の温度帯区分をさらに細分化し、下記のような新温度帯に設定し直されています。
| 区分 | 温度帯(新) |
| C3 | -2℃を超え、+10℃以下のもの |
| C2 | -10℃を超え、-2℃以下のもの |
| C1 | -18℃を超え、-10℃以下のもの |
| F1 | -24℃を超え、-18℃以下のもの |
| F2 | -30℃を超え、-24℃以下のもの |
| F3 | -35℃を超え、-30℃以下のもの |
| SF1 | -40℃を超え、-35℃以下のもの |
| SF2 | -45℃を超え、-40℃以下のもの |
| SF3 | -50℃を超え、-45℃以下のもの |
| SF4 | -50℃以下のもの |
出典:国土交通省「倉庫業法第三条の登録の基準等に関する告示の一部を改正する告示について」
参考:e-GOV法令検索「倉庫業法施行規則」
冷凍食品は旧温度帯での保管は-20℃以下と定められていましたが、新温度帯では-18℃以下での保管が求められるようになりました。このため、新温度帯に適応した温度管理の精度や範囲を確認することが不可欠です。
また、温度管理のシステムがどれほど信頼性が高いかも考慮すべき要素です。温度センサーや監視システムが整備されている倉庫では、異常が発生した際に迅速に対応できるため、商品の品質を保つ上で安心です。さらに、定期的なメンテナンスや温度チェックが行われているかどうかも確認しておくと良いでしょう。
配送車も冷凍対応しているか
冷凍倉庫を選ぶ際には、倉庫内での保管だけでなく、配送車の冷凍対応も重要なポイントです。特に食品や医薬品など、温度管理が厳格に求められる商品を扱う場合、倉庫から出荷する際の温度管理が不十分であれば、品質が損なわれるリスクが高まります。そのため、倉庫と配送車の両方が冷凍対応であることが求められます。
また、配送車の冷凍機能がどの程度の温度帯に対応しているかも確認が必要です。特定の温度範囲での保管が求められる商品に対して、適切な温度管理ができる車両を選ぶことが、品質保持のためには不可欠です。
冷凍倉庫を安く利用するためのコツ

冷凍倉庫を利用する際、コストを抑えるためにはいくつかのポイントを押さえておくことが重要です。ここでは代表的なポイントを3つご紹介します。
必要以上のスペースにお金を使わない
冷凍倉庫を利用する際、必要以上のスペースにお金を使わないことが重要です。倉庫の保管料は、使用するスペースの大きさに比例して増加するため、無駄なスペースを確保することはコストを押し上げる要因となります。まずは、自社の出荷量や在庫の変動を正確に把握し、必要なスペースを見極めることが大切です。
例えば、季節によって需要が変動する商品を扱っている場合、ピーク時に合わせたスペースを確保し、オフシーズンには縮小する柔軟な契約形態を選ぶことがコスト削減につながります。また、パレット単位や坪単位での料金体系を理解し、どの単位での契約が最も経済的かを検討することも重要です。
さらに、倉庫の利用状況を定期的に見直し、必要なスペースを常に最適化することで、無駄なコストを削減できるでしょう。
それぞれの立地の良さを知る
冷凍倉庫を選ぶ際は、立地によって物流コストや配送時間が大きく変わるため、慎重に検討する必要があります。まず、主要な交通インフラへのアクセスが良い場所を選ぶことが基本です。高速道路や港、空港に近い倉庫は、輸送効率が高く、迅速な出荷が可能です。
また、顧客や取引先の所在地も考慮する必要があります。顧客が多く集まるエリアに近い倉庫を選ぶことで、配送コストを抑えられるだけでなく、納品のスピードも向上します。特に、食品や医薬品などの鮮度が求められる商品を扱う場合、迅速な配送は競争力を高める要因となるでしょう。
さらに、地域の気候条件も重要です。冷凍倉庫は温度管理が求められるため、外気温が極端に高い地域では、冷却コストが増加する可能性があります。逆に、気候が穏やかな地域では、冷却効率が良く、コストを抑えることができるでしょう。
必要なオプションだけ利用する
冷凍倉庫を利用する際には、必要なオプションだけを選ぶことがコストを抑えるための重要なポイントです。多くの冷凍倉庫では、さまざまなサービスやオプションが提供されていますが、すべてを利用する必要はありません。自社のニーズに合ったサービスを見極めることで、無駄な出費を避けることができます。
さらに、オプションの中には、長期契約を結ぶことで割引が適用されるものもありますが、実際にそのサービスが必要かどうかを慎重に判断することが求められます。冷凍倉庫を利用する際には、自社のニーズに合った必要なオプションだけを選ぶことで、効率的にコストを管理し、経済的な運営を実現させましょう。
まとめ
本記事では、冷凍倉庫の費用相場や選び方のポイント、コストを抑える方法について詳しく解説しました。倉庫保管料やシステム利用料、人件費、電気料金など、さまざまな要因がコストに影響を与えるため、これらをしっかりと理解することが重要です。
また、倉庫選びにおいては、出荷量の変化に柔軟に対応できるか、料金とサービス内容が見合っているか、過去の支援実績が豊富かなど、複数のポイントを考慮する必要があります。さらに、予算内に収まるかどうかや、環境への配慮、自社製品の保管温度に対応しているかも考慮し、自社に最適な冷凍倉庫を選びましょう。