冷凍冷蔵倉庫の市場規模とは?国内外の動向・成長要因・課題を解説
冷凍冷蔵倉庫は、コールドチェーン(低温物流)を支える重要なインフラです。冷凍食品やECの拡大、医薬品需要の高まりを背景に、関連市場は世界的に成長を続けています。
本記事では、冷凍冷蔵倉庫の市場規模の捉え方から、国内・世界の市場規模と推移、拡大の背景にある成長要因、業界が抱える課題、今後のトレンドと展望までを、各種統計や調査をもとに解説します。
市場規模の数値は調査機関により幅があるため、出典と時点もあわせて見ていきます。
冷凍冷蔵倉庫の市場規模とは

まずは、冷凍冷蔵倉庫の市場規模をどう捉えるかを押さえておきましょう。市場規模の見方と、参考になる公的統計について整理します。
市場規模の捉え方
冷凍冷蔵倉庫の市場規模は、捉え方によって数字が大きく変わります。
冷凍冷蔵倉庫という施設単体で見るのか、保管・輸送・流通を含むコールドチェーン物流市場全体で見るのかによって、対象範囲が異なるためです。多くの市場調査では、コールドチェーン物流市場として、保管(倉庫)と輸送をまとめた規模が示されます。
また、調査機関ごとに対象や算出方法が異なるため、同じ市場規模でも数値に幅が出ます。市場規模の数字は、何を対象にした、いつ時点の、どの調査によるものかを確認することが大切です。
冷蔵倉庫の公的統計(所管容積・入庫量)の見方
冷凍冷蔵倉庫そのものの規模を知る手がかりとなるのが、公的な統計です。
倉庫業の業界団体や国土交通省は、冷蔵倉庫の所管容積(倉庫の容量)や入庫量といったデータを公表しています。所管容積を見れば、全国の冷蔵倉庫の容量や、どの地域に集中しているかを把握できます。
入庫量や在庫率の推移からは、需要の動向が読み取れます。倉庫業法では10℃以下で保管する施設を冷蔵倉庫と定義しており、公表される統計もこの定義に基づくものです。市場調査の推計とあわせて見ることで、市場をより立体的につかめます。
国内(日本)の市場規模と推移

ここでは、日本国内の冷凍冷蔵倉庫・コールドチェーン物流の市場規模と、その推移を見ていきます。数値は調査機関による推計です。出典と時点を意識しながら見ていきましょう。
日本のコールドチェーン物流市場の規模と成長率
日本のコールドチェーン物流市場の規模は、複数の民間の調査会社によって推計・公表されています。例えば、ある調査会社の推計では、2024年における市場規模はおよそ200億米ドル台とされ、2030年前後に向けて年平均約6%で成長すると見込まれています(※1)。
別の調査においても、市場規模は2024年時点で200億米ドル前後とされ、年率4〜5%程度で拡大するとの見通しです(※2)。
いずれの調査でも、市場は緩やかに成長し続けるという見方で共通しています。ただし、対象範囲や算出方法の違いから、具体的な金額や成長率は調査によって差があり、より高い成長率を示す調査もあります。
日本市場は、すでに一定の規模に達した成熟市場とされる一方で、後述する食品ECや医薬品の需要拡大を背景に、今後も着実な成長が見込まれています(数値は各調査会社の2024〜2025年時点の推計)。
(※1)出典:Mordor Intelligence「日本のコールドチェーン物流市場」2024年
(※2)出典:IMARC Group「日本のコールドチェーン物流市場」2024年
冷凍冷蔵倉庫の容量・拠点数の動向
冷凍冷蔵倉庫の容量や立地の動向は、公的統計や業界データから読み取れます。冷凍冷蔵倉庫の容量(所管容積)は、人口の多い消費地や港湾の近くに集中する傾向があります。
例えば、2024年時点の統計では、神奈川県が全国で最も大きな冷凍冷蔵倉庫容量を持ち、東京都がそれに続くとされています(※)。
これは、首都圏という巨大な消費地と、輸入の玄関口となる港湾の存在を反映したものです。
一方で、地方では容量が限られる地域もあり、保管能力の地域的な偏りが課題として指摘されています。
近年は、首都圏や大阪圏で大型の物流施設の開発が進む一方、施設の老朽化や建て替えの動きも見られます。新規の供給が増える地域では、需給のバランスにも目を向ける必要があります。容量と拠点の動向は、市場の今を映す重要な指標です。
(※)出典:日本冷蔵倉庫協会「都道府県別所管容積一覧」2024年12月末時点
世界の市場規模と予測

冷凍冷蔵倉庫の市場は、世界的に見ても成長を続けています。ここでは、世界市場の規模と予測、地域別の動向を見ていきます。国内市場の先を読むうえでも参考になるため、グローバルな視点で押さえましょう。
世界市場の規模とCAGRの見通し
世界のコールドチェーン物流市場の規模は、調査機関により幅がありますが、いずれも成長が見込まれています。ある調査では、世界市場は2024年時点で数千億米ドル規模とされ、今後も年平均二桁台で拡大すると予測されています(※)。
その背景には、人口増加や経済成長、食品・医薬品の国際的な流通拡大があります。数値は調査により異なるため、出典と時点の確認が重要です(各調査の2024〜2025年時点の推計)。
(※)出典:Global Market Insights「Cold Chain Logistics Market」2024年
地域別の動向
地域別に見ると、アジア太平洋地域の成長が際立っています。多くの調査で、アジア太平洋は世界のコールドチェーン市場で大きなシェアを占め、かつ最も成長性が高い地域とされています(※)。経済成長にともなう生活水準の向上や、食生活の変化、ECの普及が、低温物流の需要を押し上げているためです。
北米や欧州も、成熟した市場として安定した需要を持ち、医薬品物流などを中心に底堅く推移しています。
こうした世界的な需要の高まりは、設備や技術の進化を促し、日本の冷凍冷蔵倉庫業界にも影響を与えています。
(※)出典:straitsresearch「コールドチェーン物流市場規模」2026年
(※)出典:Global Market Insights「コールドチェーン物流市場 サイズとシェア 2026-2035」
市場拡大の背景・成長要因
冷凍冷蔵倉庫の市場は、なぜ拡大を続けているのでしょうか。ここでは、市場拡大の背景にある主な成長要因を解説します。
冷凍食品・EC・中食の需要拡大
最大の成長要因が、冷凍食品やEC、中食(持ち帰り・宅配の調理済み食品)の需要拡大です。共働き世帯や単身世帯の増加、利便性志向の高まりを背景に、冷凍食品やチルド食品の消費は伸びています。
実際に、日本冷凍食品協会の統計においても、冷凍食品の需要は高い水準で推移しています(※1)。
さらに、食料品のオンライン販売(食品EC)の拡大も大きな要因です。経済産業省の電子商取引に関する市場調査によれば、食品分野のEC市場は伸び続けています(※2)。
生鮮品や冷凍品をオンラインで購入する動きが広がり、温度管理された保管・配送へのニーズが高まっています。こうした消費スタイルの変化が、冷凍冷蔵倉庫の需要を押し上げています。
食品ECの課題や物流戦略については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
(※1)出典:日本冷凍食品協会「冷凍食品の生産・消費」2024年
(※2)出典:経済産業省「令和6年度 電子商取引に関する市場調査」
医薬品のコールドチェーン需要
医薬品分野も、コールドチェーン需要を支える大きな柱です。ワクチンや生物製剤、再生医療等製品など、温度管理が欠かせない医薬品が増えています。
これらは、定められた温度帯を外れると効果や安全性が損なわれるため、製造から輸送、保管まで厳格な低温管理が求められます。高齢化や医薬品の高度化を背景に、医薬品向けの需要は拡大しています。
医薬品の物流は、温度管理の精度や記録の確実さが問われる分野であり、専用の設備を持つ冷凍冷蔵倉庫への需要が高まっています。食品とならび、医薬品は市場成長を牽引する重要な分野です。
食品ロス削減・品質保持への関心の高まり
食品ロスの削減や、品質保持への関心の高まりも、市場拡大を後押ししています。適切な温度管理によって食品の鮮度を長く保てれば、廃棄される食品を減らせるためです。
社会全体で食品ロスの削減が課題とされるなか、コールドチェーンの重要性はますます高まっています。また、消費者の品質への要求も高まっています。
高品質な生鮮品や、こだわりの食材を、鮮度を保ったまま届けるニーズが高まっており、それを支える低温物流の価値が見直されています。食品ロス削減と品質保持という社会的要請が、冷凍冷蔵倉庫の需要を底支えしています。
市場が抱える課題

冷凍冷蔵倉庫の市場は、成長を続ける一方で、いくつかの課題も抱えています。ここでは、主な課題を解説します。成長の裏側にある構造的な問題を押さえておくことが、今後を見通す上で欠かせません。
保管容量の地域偏在と施設の老朽化
一つ目の課題が、保管容量の地域的な偏りです。前述のとおり、冷蔵倉庫の容量は首都圏や港湾部に集中しており、地方や消費地によっては保管能力が不足する地域もあります。この偏在は、輸送距離の増加やコスト高につながり、効率的な物流の妨げになります。
二つ目が、施設の老朽化です。日本の冷蔵倉庫には、建設から年数を経た施設も多く、設備の効率低下や、現在の省エネ・環境基準への対応が課題となっています。老朽化した施設は、電気代の増加や保管品質の面でも不利です。更新・建て替えには大きな投資が必要で、業界全体の課題です。
容量の偏在と老朽化への対応は、市場の持続的な成長に向けた重要なテーマです。
2024年問題・人手不足・設備投資の負担
物流業界全体の課題も、冷凍冷蔵倉庫に影響します。トラックドライバーの時間外労働規制に端を発する2024年問題は、輸送力の確保を難しくしています。
低温物流も例外ではなく、配送の効率化が求められています。また、深刻化する人手不足は、過酷な環境となりやすい冷凍倉庫の現場で、とくに大きな課題です。
冷却設備や自動化への設備投資も負担が大きく、とりわけ中小の事業者には重い課題です。
2024年問題については、以下の記事で具体的に解説しているので、知識を深めたい場合はぜひ参考にしてみてください。
都市圏物流施設の需給バランス
近年、首都圏や大阪圏では、大型の物流施設の開発が活発に進んでいます。また、冷蔵・冷凍に対応した施設の供給も増えています。
一方で、需要を上回る供給が進めば、空室率の上昇や賃料の下落といった需給バランスの問題も生じかねません。
実際、一部のエリアでは供給過剰が指摘されることもあります。開発が集中する都市圏では、需給バランスの見極めが、事業者にとって重要な視点となっています。
市場のトレンドと今後の展望

最後に、冷凍冷蔵倉庫の市場のトレンドと、今後の展望を見ていきます。市場の変化の方向性を、技術と環境対応、保管のあり方という観点から、今後の展望として押さえておきましょう。
自動化・大型化とIoTによる温度管理
今後のトレンドとして、まず挙げられるのが、施設の自動化と大型化です。人手不足に対応するため、自動倉庫システムや搬送ロボットの導入により省人化された大型施設の開発が進んでいます。このような施設では、少ない人員でも効率的な運営が可能です。
また、IoTやセンサーを活用した温度管理の高度化も進んでいます。庫内の温度をリアルタイムで監視・記録し、異常があれば即座に検知する仕組みは、品質保証とトレーサビリティの面で重要性を増しています。
野村総合研究所の「10年後の冷蔵倉庫市場の展望」(NRIパブリックマネジメントレビュー2023年8月号)など、業界の将来を見通す分析においても、こうした自動化・大型化・高度化が今後の方向性として示されています。
自然冷媒・脱炭素とシェア型・アセットライト化の流れ
もう一つの大きな流れが、脱炭素への対応と、保管のあり方の変化です。地球温暖化対策として、温室効果の高いフロン冷媒から、アンモニアやCO2といった自然冷媒への転換が進んでいます。
2030年に向けたフロン規制の強化も背景にあり、環境性能の高い設備への更新が進んでいます。省エネ性能の高い施設や、再生可能エネルギーを活用した倉庫も増えています。あわせて注目されるのが、保管のあり方の変化です。
従来は自社で倉庫を保有・運営するのが一般的でしたが、近年は、必要なときだけ使えるシェア型のサービスの活用や、資産を自社で抱えないアセットライトな考え方が広がっています。企業が設備投資を抑えつつ、変動する需要に柔軟に対応できるためです。
従来の自前主義から、外部のリソースを使い分ける方向へと発想が変わりつつあります。このような流れは、設備投資の重さや需要の変動という課題への、現実的な解として広がっています。
市場変化を踏まえた保管戦略
冷凍冷蔵倉庫の市場は成長を続ける一方で、保管容量の地域偏在、設備投資の負担、需要変動といった課題を抱えています。こうした市場環境を踏まえると、保管戦略も柔軟に見直す必要があります。
すべてを自社の倉庫でまかなおうとすると、需要のピークに合わせた投資が必要になり、閑散期には遊休スペースが発生する可能性があります。特に、季節や商材によって保管量が変わる場合、自社設備だけで最適化するのは容易ではありません。
そこで有効なのが、市場の変化に対応した保管手段の組み合わせです。
1パレット・1日単位から使えるシェア型のスポット保管サービス「コールドクロスネットワーク」を活用すれば、自社設備を増やさずに、需要の変動分や一部エリアでの保管不足を補えます。
保管した分だけ費用が発生するため、固定費化を抑えながら、消費地に近い保管拠点を確保しやすくなります。
自社保有と外部リソースを組み合わせ、アセットライトな物流網を築くことが、市場の変化に対応した保管戦略の鍵となります。
まとめ
冷凍冷蔵倉庫の市場は、冷凍食品やEC、医薬品の需要拡大を背景に、国内外で成長を続けています。なお、市場規模の数値は調査機関によって幅があるため、出典と時点を確認することが大切です。
一方で、保管容量の地域偏在や施設の老朽化、人手不足、設備投資の負担といった課題もあります。
今後は、自動化・大型化や脱炭素、シェア型・アセットライト化が進むと見込まれます。市場の変化を踏まえ、自社保有と外部の柔軟な保管手段を組み合わせる戦略が重要になります。
編集・監修
コールドクロスネットワーク編集部
物流・倉庫業界の実務知識を発信する編集チームです。サプライチェーン領域の専門家、実務経験者、ライターの皆様に助けられながら、 「物流から世界をもっと便利に変える」を共に目指しています。
高田 直樹
物流事業の実務、経営に精通し、現場視点から本メディアの編集方針を監修。
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