冷蔵倉庫業とは?倉庫業法上の区分・登録要件・現状を解説
冷蔵倉庫業は、庫内を10℃以下に保ち、食品などをコールドチェーンのなかで保管する事業です。需要を背景に重要性が高まる一方、営業倉庫として営むには倉庫業法の登録や、温度区分・関連法令への対応が求められます。
本記事では、冷蔵倉庫業の定義や冷凍倉庫業との違いから、倉庫業法上の温度区分、登録要件、関連法令、料金・約款の仕組み、業界の現状と課題、自社倉庫・営業倉庫・スポット活用の使い分けまでを、実務の視点で解説します。
冷蔵倉庫業とは?

まずは、冷蔵倉庫業とはどのような事業か、その定義と、混同されやすい冷凍倉庫業との違いを押さえておきましょう。両者は地続きの関係にあります。基礎から順を追って整理します。
冷蔵倉庫業の定義
冷蔵倉庫業とは、他者から預かった物品を低温に保ったまま冷蔵倉庫で保管し、対価を得る事業です。倉庫業法上は、寄託を受けた物品を保管する倉庫業の一種に位置づけられます。
倉庫業法では、庫内を常時10℃以下に保つ倉庫を冷蔵倉庫と定め、そこで保管する物品を第八類物品と呼びます。第八類物品には、肉や魚などの生鮮品、冷凍食品、乳製品など、低温で保つことが適当な品目が含まれます。
冷蔵倉庫業は、こうした温度管理が必要な物品を品質を保ったまま保管し、生産地から消費地へとつなぐコールドチェーンの一翼を担います。需要に応じて在庫を調整する役割も果たす、私たちの食を支える欠かせない社会インフラといえる事業です。
冷蔵倉庫業と冷凍倉庫業の違い
冷蔵倉庫業と冷凍倉庫業はしばしば混同されますが、主な違いは扱う温度帯にあります。
倉庫業法では、10℃以下の冷蔵倉庫を温度帯ごとに等級で区分しています。冷蔵(C級)は−18℃を超え+10℃以下(うち代表的なC3級は−2℃を超え+10℃以下)、冷凍(F級)は−18℃以下を指します。
一般に、冷蔵倉庫業はチルドや冷蔵帯(C級)を中心に扱い、冷凍倉庫業はより低温の冷凍帯(F級)を扱う事業です。
ただし、法律上はどちらも冷蔵倉庫の枠組みに含まれ、両者は地続きの関係にあります。実務では、より低温を保つ冷凍倉庫のほうが、設備や電力の負担が大きくなります。
両者の違いをより詳しく知りたい場合は、冷凍倉庫業の関連記事もあわせてご確認ください。
倉庫業法における冷蔵倉庫の温度区分(等級)

冷蔵倉庫業を理解するうえで欠かせないのが、温度区分(等級)です。ここでは、その区分と、品目との対応を整理します。冷蔵倉庫業の土台となる知識です。
C級・F級の温度階級
倉庫業法では、冷蔵倉庫の保管温度を等級で区分しています。
従来は、冷蔵(クーラー)級と冷凍(フローズン)級に分け、あわせて7つの区分が用いられてきました。
冷蔵のC級は、C3級(−2℃を超え+10℃以下)、C2級(−10℃を超え−2℃以下)、C1級(−20℃を超え−10℃以下)の3つ。冷凍のF級はF1級からF4級まであり、もっとも低いF4級は−50℃以下で、C3からF4まで、あわせて7区分でした。
なお、この温度区分は、2024年4月(令和6年)の倉庫業法施行規則の改正によって見直され、従来の7区分から10区分へと、より細かく細分化されました。過度な低温運転を避け、省エネを進めるねらいがあります。
自社が扱う温度帯がどの等級にあたるかは、施設の設計や登録手続きの前提となります。最新の区分を、国土交通省の情報で確認しておきましょう。
C級・F級の違いだけでなく、冷凍倉庫・冷蔵倉庫・定温倉庫・常温倉庫それぞれの温度帯や、保管に適した商品について知りたい方は、以下の記事もあわせてご覧ください。
▶︎【冷凍倉庫を探している人注意】物流倉庫の温度帯とは?保管物についても解説
取り扱う主な品目と温度帯の対応
冷蔵倉庫で保管する品目には、それぞれに適した温度帯があります。
比較的高めのC級(冷蔵・チルド帯)では、野菜や果物などの青果物、乳製品、加工食品、飲料などを保管します。
0℃前後のチルド帯(資料によっては−5℃〜5℃程度とされる場合もあります)は、生鮮の肉や魚、要冷蔵の食品の保管に適した温度帯です。
一方、−18℃以下のF級(冷凍帯)では、冷凍食品や、長期保存する水産物・畜産物などを保管します。アイスクリームなど、さらに低い温度を要する品目もあります。
このように、何を保管するかによって、必要な温度帯は変わってきます。冷蔵倉庫業では、扱う品目に応じた温度帯の設備を備え、それぞれの品質を保てる環境が欠かせません。品目と温度帯の対応を理解することが、適切な保管の基礎になります。
冷蔵倉庫業の登録要件
冷蔵倉庫業を営むには、倉庫業法にもとづく登録が必要です。ここでは、登録に必要な主な要件を解説します。施設の基準と、人の要件である倉庫管理主任者の選任が、大きな2つの柱です。
施設・設備基準
冷蔵倉庫業の登録を受けるには、冷蔵倉庫の種類に応じて定められた施設設備基準を満たす必要があります。
まず、建物そのものについて、土地への定着性や、必要な構造・強度が求められます。次に、火災対策として、火災の延焼を防ぐ防火区画や消火器具の設置が必要です。
また、保管した物品を正しく扱うための計量の設備や、庫内の温度を測る温度計、温度を保つ冷蔵設備も求められます。
さらに、盗難を防ぐ防犯の措置も基準に含まれます。冷蔵倉庫に特有の基準としては、冷蔵室内に閉じ込められた際に外部へ知らせる通報設備なども必要です。
これらの基準は、預かった物品を安全に保管するために定められたものです。登録申請の際には、基準を満たしていることを、図面や計算書などの書類と現地確認によって審査されます。
冷蔵倉庫ならではの基準が多く、基準を満たす倉庫を用意することが、登録の第一歩となります。
倉庫管理主任者の選任と要件
施設設備基準とあわせて登録に欠かせないのが、倉庫管理主任者の選任です。
倉庫業法では、登録を受けた倉庫ごとに、原則として倉庫管理主任者を1名選任することが義務づけられています。
倉庫管理主任者は、倉庫における火災の防止や施設の管理、倉庫管理業務の適正な運営、労働災害の防止、従業員への研修といった役割を担う、現場の責任者にあたる存在です。
倉庫管理主任者になるには、一定の要件を満たす必要があります。
具体的には、倉庫の管理業務に3年以上たずさわった実務経験があること、倉庫の管理業務における指導監督的な立場での実務経験が2年以上あること、国土交通大臣が定める講習を修了していること、またはこれらと同等以上の知識・能力を有すると国土交通大臣が認めることのいずれかに該当する必要があります。
一定の条件のもとでは、複数の倉庫を1名が兼ねることも認められています。
冷蔵倉庫業に関連する法令と責任者

冷蔵倉庫業は、倉庫業法以外にも、複数の法令に関係します。ここでは、関連する法令と責任者を解説します。
高圧ガス保安法と冷凍保安責任者
冷蔵倉庫の冷却設備では、冷媒として高圧のガスが使われます。
とりわけ、アンモニアなどを冷媒に使う一定規模以上の冷凍設備は、高圧ガス保安法の規制を受けます。この法律は高圧ガスによる災害を防ぐためのもので、設備の許可や届出、保安のための管理が求められます。
一定の規模以上の冷凍設備を持つ事業所では、冷凍保安責任者を選任する義務があります。冷凍保安責任者は冷凍設備の保安を統括する責任者で、第一種から第三種の冷凍機械責任者免状を持つ者などから、設備の規模に応じて選任します。
アンモニアは、温室効果が小さく省エネ性能に優れた自然冷媒として注目される一方、毒性や可燃性があるため、適切な安全管理が欠かせません。
高圧ガス保安法への対応は、安全な冷蔵倉庫の運営に不可欠です。設備の規模や冷媒の種類に応じて、必要な手続きと体制を整えましょう。
食品衛生法・消防法など関連法令
冷蔵倉庫業は、扱う物品や設備に応じて、さまざまな法令に対応する必要があります。
食品を保管する場合は、食品衛生法が関係します。食品を衛生的に保管・管理するための基準への対応や、必要に応じた営業許可などが求められます。
火災対策としては、消防法に従い、消火設備や警報設備などを適切に備えなければなりません。建物そのものは、建築基準法にもとづいて建てられている必要があります。
さらに、温室効果の高いフロン類を冷媒に使う設備については、フロンの排出を抑制する法律にもとづく管理が求められます。
このように、冷蔵倉庫業は複数の法令が関わる事業です。倉庫業法による登録だけでなく、これらの関連法令への対応をもれなく行うことが、適正な事業運営の前提となります。専門家の支援を受けながら進めるのが確実でしょう。
冷蔵倉庫業の料金・約款の仕組み
冷蔵倉庫業の料金は、どのように決まるのでしょうか。ここでは、保管料の考え方と、約款の仕組みを解説します。独特の計算方法と、荷主との取引ルールを押さえておきましょう。
保管料(積数・期建て)の考え方
冷蔵倉庫業の主な収入源は、物品を預かって得る保管料です。その計算には、独特の考え方が用いられます。
代表的なのが、保管した物品の数量に着目した積数による方式です。これは、預かった物品の量と、保管した日数などを掛け合わせて算出する考え方です。
また、保管料を一定の期間で区切って計算する、期建てと呼ばれる方法もあります。一般的には、1か月を上旬・中旬・下旬の3つに分け、それぞれの期を単位として保管料を計算します。
低温帯ほど、料金は高くなる傾向があります。保管料に加え、入出庫の作業料や検品などの付帯サービスの料金も、収益の柱です。
標準倉庫寄託約款と保管責任
冷蔵倉庫業では、荷主との取引のルールを定める約款が重要な役割を果たします。
国土交通省は、標準的な約款として、標準倉庫寄託約款や、冷蔵倉庫向けの標準冷蔵倉庫寄託約款を示しています。多くの事業者は、これをもとにした約款を用いています。約款には、保管の条件や料金、責任の範囲などが定められています。
特に重要なのが、保管責任です。倉庫業者は、預かった物品を善良な管理者の注意をもって保管する義務を負います。損害が生じた場合の責任の範囲や免責についても、約款に定められています。
なお、約款は届出が必要です。荷主との間で保管の条件や責任の範囲を明確にしておくことが、トラブルの防止につながります。
冷蔵倉庫業界の現状と動向

冷蔵倉庫業界は、いま大きな変化のなかにあります。ここでは、業界の現状と動向を解説します。客観的な視点から、統計と直面する課題の両面を見ることで、業界の今を正しくつかみましょう。
入庫量・在庫率など業界統計の見方
冷蔵倉庫業界の動向は、各種の業界統計から読み取れます。
代表的な指標が、入庫量と在庫率です。入庫量は、一定期間にどれだけの物品が冷蔵倉庫に入ったかを示し、需要の勢いを表します。在庫率は、倉庫の容量に対してどれだけ在庫が積まれているかを示す指標で、需給のバランスを読むのに役立ちます。
在庫率が高ければ保管スペースが逼迫していることを、低ければ余裕がある状態です。また、冷蔵倉庫の容量を示す所管容積からは、保管能力の全体像や地域分布がわかります。
これらの統計は、業界団体や国土交通省が公表しています。統計を継続的に見れば、需要の動きや自社の立ち位置を客観的に把握できます。データにもとづいて事業の方向性を考えることが、変化の激しい時代には欠かせません。指標の意味を理解して活用しましょう。
施設の老朽化・2024年問題・脱炭素への対応
冷蔵倉庫業界は、いくつかの構造的な課題に直面しています。
一つが、施設の老朽化です。日本の冷蔵倉庫には建設から年数を経た施設が多く、設備の効率低下や、現在の基準への対応が課題となっています。更新や建て替えには、大きな投資が必要です。
二つ目が、いわゆる2024年問題です。トラックドライバーの時間外労働規制により輸送力の確保が難しくなり、保管と輸送をつなぐ冷蔵倉庫業にも影響が及んでいます。
三つ目が、脱炭素への対応です。温室効果の高いフロン冷媒から、アンモニアやCO2などの自然冷媒への転換や、省エネ設備の導入が進められています。これらは環境規制への対応であると同時に、電気代の削減にもつながります。
老朽化・輸送力・脱炭素という課題に、業界全体で取り組むことが求められています。
冷蔵倉庫業の課題とこれから

最後に、冷蔵倉庫業がこれから向き合う課題と、業界が進める対応策を整理します。課題と、それに対する前向きな取り組みの両面を押さえ、これからの事業を考えるヒントにしましょう。
電気代高騰・人手不足・2030年フロン規制
冷蔵倉庫業が抱える課題は、複数あります。
まず、電気代の高騰です。冷蔵倉庫は庫内を低温に保つため消費電力が大きく、電力単価や燃料価格の上昇が運営コストを直接押し上げます。
次に、人手不足です。低温下での作業をともなう冷蔵倉庫の現場は人材の確保が特に難しく、高齢化も進んでいます。働き手の確保と定着は、業界共通の課題です。
さらに、2030年に向けたフロン規制への対応も迫られています。温室効果の高いフロン冷媒は段階的な削減が進められており、古い設備を使い続けることが難しくなっていきます。自然冷媒への転換には費用がかかりますが、補助金も活用しながら計画的に進める必要があります。
自動化・共同化・シェア型活用の流れ
こうした課題に対し、業界では対応が進んでいます。人手不足には、自動倉庫や搬送ロボットによる自動化・省人化が有効です。輸送力の確保には、複数の事業者による共同輸配送の動きもあります。
また、必要なスペースを必要なときだけ使うシェア型サービスの活用も広がり、設備投資を抑えつつ需要変動に対応できます。自前主義から外部リソースを使い分ける方向へ、発想は変わりつつあります。
冷蔵倉庫業における自社倉庫と営業倉庫・スポット活用の使い分け
冷蔵倉庫業を営むには、倉庫業法の登録や、施設設備基準への適合、関連法令への対応、そして電気代や設備更新といった負担をともないます。専門性が高く、投資も大きい事業です。
こうしたなか、すべての保管需要を自社倉庫でまかなうか、他社の営業倉庫と連携するか、あるいは繁忙期だけスポットの保管サービスを組み合わせるかは、経営上の重要な判断になります。
自社倉庫を中心に据える運営は、安定した物量があり保管を事業の中核とするなら合理的です。しかし、荷主からの預かり量に繁閑の差が大きい場合、ピークに合わせて自社設備を拡張すると、閑散期に過剰な設備とコストを抱えることになりかねません。
そこで有効なのが、自社倉庫・外部倉庫との連携・スポット利用を、物量や時期に応じて使い分ける考え方です。
たとえば、繁忙期の一時的な保管需要や自社拠点だけでは対応しきれない地域の荷物には、1パレット・1日単位から使えるシェア型のスポット保管サービス「コールドクロスネットワーク」を活用すれば、自社で設備を増設することなく、必要なときだけ保管能力を確保できます。
また自社拠点でカバーしきれない地域の需要に、外部ネットワークで応える手段としても役立ちます。
まとめ
冷蔵倉庫業は、庫内を10℃以下に保ち、第八類物品を保管する事業です。
営業倉庫として営むには倉庫業法の登録が必要で、施設設備基準と倉庫管理主任者の選任が求められます。高圧ガス保安法や食品衛生法など、関連法令への対応も必要です。料金は積数や期建てで計算され、約款にもとづいて保管責任を負います。
電気代高騰や人手不足、フロン規制といった課題のなか、自社の事業環境に合わせた戦略的な自社保有の営業倉庫展開に加え、外部倉庫の活用やスポット利用できるシェア型サービスの活用を組み合わせることが、有効な選択肢になります。
編集・監修
コールドクロスネットワーク編集部
物流・倉庫業界の実務知識を発信する編集チームです。サプライチェーン領域の専門家、実務経験者、ライターの皆様に助けられながら、 「物流から世界をもっと便利に変える」を共に目指しています。
高田 直樹
物流事業の実務、経営に精通し、現場視点から本メディアの編集方針を監修。
鈴木 邦成
物流、ロジスティクス工学の専門家として、記事内容の学術的正確性を監修。