冷凍設備付き貸倉庫とは?賃料相場・メリット・探し方を解説
冷凍・冷蔵が必要な商品を扱う事業者にとって、保管場所の確保は重要な課題です。自社で冷凍倉庫を建てるには大きな投資が必要ですが、冷凍設備が備わった倉庫を借りるという選択肢もあります。
本記事では、冷凍設備付き貸倉庫の特徴や賃料の相場の考え方、借りるメリットとデメリット、物件の探し方や選び方のポイント、そして借りる・建てる・スポット利用の比較までを、実務の視点で整理して解説します。
冷凍設備付き貸倉庫とは

まずは、冷凍設備付き貸倉庫とはどのような倉庫で、自社で設備を設ける場合と何が違うのかを押さえておきましょう。
冷凍設備付き貸倉庫の特徴と一般的な物件タイプ
冷凍設備付き貸倉庫とは、あらかじめ冷凍・冷蔵の設備が備わった状態で借りられる倉庫のことです。借主は自分で冷却設備を設置することなく、契約後すぐに低温での保管を始められます。
物件のタイプもさまざまで、一棟まるごと借りる形や、大きな倉庫の一区画、冷凍室・冷蔵室の単位で借りる形などがあります。温度帯も、冷蔵から冷凍、超低温まで多様です。
立地や規模、対応温度帯によって、賃料や使い勝手は大きく変わるため、自社の保管ニーズに合った物件を見極めることが必要です。
自社で冷凍設備を設置する場合との違い
冷凍設備付き貸倉庫の大きな特徴は、設備が初めから備わっている点です。常温倉庫を借りて自社で冷凍設備を後付けする方法もありますが、設置には大きな費用と時間がかかります。
また、賃貸物件への大がかりな設備設置には、貸主の許可や原状回復の問題も伴います。冷凍設備付き貸倉庫であれば、こうした設備投資や工事の手間を省き、すぐに事業を始められます。
一方で、設備の仕様は物件によって決まっているため、自社の希望する温度帯や能力に完全に合うとは限りません。設備が用途に合うかどうかの見極めが、物件選びの鍵となります。
冷凍設備付き貸倉庫の賃料・費用相場

冷凍設備付き貸倉庫を借りる際にかかる費用を整理しておきましょう。賃料の相場の考え方と、賃料以外にかかる費用について解説します。総額で費用を把握することが大切です。
坪単価の相場
冷凍設備付き貸倉庫の賃料は坪単価で示されることが多いものの、その金額は立地・規模・温度帯・設備の状態によって大きく変わります。
冷凍設備が備わっている分、常温の倉庫よりも坪単価は高くなることが一般的で、業界の市場レポートでは常温物流施設のおおむね2倍の賃料水準とされています。
また、消費地に近い首都圏などの好立地ほど賃料は高く、保つ温度が低い物件ほど、設備や電力の負担が大きい分、賃料も高くなる傾向にあります。
ただし、冷凍設備付きの貸倉庫は物件数が限られるため、一般の物流施設ほど整備された相場データは少なく、坪あたりいくらと一律に示すのは難しいのが実情です。
実際の賃料は、希望する条件で物件を探し、複数の物件を比較して把握するのが確実でしょう。相場の数字だけにとらわれず、条件に合う物件の実勢を確認することが大切です。
初期費用・保証金・原状回復費用の考え方
賃料のほかに、契約時や退去時にかかる費用も押さえておく必要があります。
契約時には、保証金(敷金)として賃料の3〜6ヶ月分が必要になるのが一般的です。大規模・専門設備の物流施設では6〜12ヶ月分に及ぶこともあります。
物件によっては礼金がかかるほか、不動産会社を介する契約では仲介手数料(賃料1ヶ月分が上限)がかかることが多いです。
また、退去時には原状回復の費用が発生します。借りていた状態に戻して返すのが原則で、その範囲や費用は契約内容によって異なります。特に、自社で何らかの設備や造作を加えた場合は、その撤去費用も見込んでおかなければなりません。
契約前に、初期費用と退去時の費用の両方を確認し、総額で資金計画を立てておきましょう。
賃料以外のランニングコスト
毎月の費用は、賃料だけではありません。
大きなコスト要因が電気代です。冷凍設備付き貸倉庫では、庫内を冷やすための電気代を借主が負担するのが一般的で、低温になるほどその額は大きくなります。賃料が安く見えても、電気代を含めた総額では割高になることもあるため、注意が必要です。
このほか、共用部分の維持にかかる管理費(共益費)が必要な場合もあります。物件によっては、設備の保守費用の負担区分が定められていることもあります。
月々の費用は、賃料・電気代・管理費まで含めて把握し、総額で比較することが重要です。
冷凍倉庫の電気代については、以下の記事で具体的に解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
冷凍設備付き貸倉庫を借りるメリット

冷凍設備付き貸倉庫を借りることには、自社で建てる場合にはないメリットがあります。ここでは、主なメリットを解説します。自社建設にはない利点に注目しましょう。
初期投資を抑えてすぐに使える
最大のメリットは、初期投資を大幅に抑えられる点です。
自社で冷凍倉庫を建てる場合、土地の取得や建設、冷凍設備の導入に多額の初期投資が必要になります。これに対し、冷凍設備付き貸倉庫を借りれば、保証金などの初期費用だけで低温での保管を始められます。大きな設備投資をせずにすむため、資金を本業や他の投資に回せるのも利点です。
また、スピードの面でも有利です。倉庫を一から建てるには設計から建設まで長い期間がかかりますが、既存の物件を借りれば、契約後すぐに事業を始められます。
需要の拡大に素早く対応したい場合や、新たな地域で保管拠点を確保したい場合に、貸倉庫は有効な選択肢です。
設備の保守・更新リスクを自社で負わない
もう一つのメリットが、設備の保守や更新のリスクを自社で抱えずにすむ点です。
冷凍設備は定期的なメンテナンスが欠かせず、いずれは更新の時期を迎えます。自社で設備を保有している場合、こうした保守費や更新費を負担し続けなければなりません。故障すれば、修理の手配や費用の負担も自社で対応する必要があります。
契約内容にもよりますが、賃貸であれば、設備の保守や更新の責任は、多くの場合、貸主側が担います。借主は、設備の老朽化や大きな修繕費の心配をせず、保管に専念できます。ただし、保守の負担区分は契約によって異なるため、契約前に確認しておきましょう。
設備リスクを負わずにすむことは、長期的な安心につながります。
冷凍設備付き貸倉庫のデメリット・注意点

メリットがある一方で、冷凍設備付き貸倉庫には注意すべき点もあります。ここでは、デメリットと注意点を解説します。契約前に把握しておくことが重要です。
物件が希少で選択肢が限られる
最大の注意点は、冷凍設備付きの貸倉庫が、そもそも物件数が少ない点です。常温の貸倉庫に比べ、冷凍設備を備えた賃貸物件は限られており、希望する条件に合う物件がすぐに見つかるとは限りません。
特に、特定の温度帯やまとまった容量、好立地といった条件が重なるほど、選択肢は絞られます。良い物件は早く埋まる傾向もあります。
そのため、物件探しには時間に余裕を持って取り組み、条件に優先順位をつけておくことが大切です。希少性が高いことを前提に、早めに情報を集め始めるとよいでしょう。
温度帯・設備仕様が用途に合うかの確認
既存の物件を借りる以上、設備の仕様はあらかじめ決まっています。そのため、その温度帯や能力が自社の保管する商品に合うかどうか、事前の確認が欠かせません。
たとえば、冷凍が必要な商品に対して設備が冷蔵帯までしか対応していなければ、用途を満たせません。逆に、必要以上に低温の設備では、不要な電気代がかかります。
保管品目に求められる温度帯や、必要な冷却能力、湿度管理の要否などを整理し、物件の設備仕様と照らし合わせましょう。
用途に合うかどうかは契約後の変更が難しいため、契約前の確認を徹底することが重要です。
立地・配送効率と契約期間・解約条件の確認
立地と契約条件も、見落とせない注意点です。
立地は、配送効率やコストに直結します。消費地や配送ルートとの位置関係を確認し、物流全体の効率を踏まえて選びましょう。
また、契約期間や解約条件も重要です。賃貸借契約には、契約期間の縛りや中途解約時の違約金が定められていることがあります。契約期間が長すぎないか、解約条件が自社の運営に適しているかを確認しておきましょう。契約内容を細かく見ておくことが、後のトラブル防止につながります。
冷凍設備付き貸倉庫の探し方
冷凍設備付き貸倉庫は、どのように探せばよいのでしょうか。主な探し方を解説します。比較の際は、次のチェックリストが見落とし防止に役立ちます。
- ・希望の温度帯(冷蔵・冷凍・超低温)に対応しているか
- ・必要な保管容量を満たすか
- ・立地は消費地や配送ルートに合うか
- ・賃料に加え、電気代や管理費などのコストは適切か
- ・契約期間・解約条件・原状回復に無理がないか
- ・冷凍設備の状態や冷媒対応は問題ないか
事業用物件の専門検索サイトの活用
まず手軽なのが、事業用物件の専門検索サイトの活用です。事業用物件のポータルサイトでは、エリアや面積などの条件で検索でき、冷凍・冷蔵対応の物件を絞り込める場合もあります。
市場にどんな物件があるかを把握するのに役立ちます。ただし冷凍設備付きの物件は数が少なく、掲載されない物件もあるため、情報収集の入り口として活用しましょう。
専門事業者・不動産会社への相談
より確実なのが、物流不動産や倉庫を専門に扱う事業者・不動産会社への相談です。専門の事業者は、公開されていない物件情報を持つことがあり、条件に合った物件を提案してもらえます。
冷凍設備付きの倉庫は専門性が高いため、低温物流に詳しいパートナーに相談すれば、設備や契約面の見落としも防げます。希少な物件を効率よく探すには、専門家の力が近道です。
シェア型サービス・スポット利用の活用
近年、選択肢として広がっているのが、シェア型のサービスやスポット利用です。倉庫を長期で借りるのではなく、必要なスペースを必要な期間だけ使える仕組みで、契約の手間をかけず低温保管を確保できます。
短期保管や需要変動への対応に向いているほか、長期賃貸の物件探しと並行して視野に入れると、選択肢が広がるでしょう。
失敗しない物件選びのポイント

物件選びで後悔しないために、押さえておきたいポイントを2つの観点から解説します。契約前の確認が、入居後の安定した運用につながります。一つずつ確認していきましょう。
温度帯・容量・将来の拡張性の確認
物件選びでまず確認したいのが、温度帯・容量・拡張性の3点です。
温度帯は、自社の保管品目に必要な温度に物件の設備が対応しているかを確認します。冷蔵・冷凍・超低温のどれが必要かを明確にし、設備仕様と照らし合わせましょう。
容量は、現在の保管量に十分な広さがあるかに加えて、入出庫の作業スペースや動線まで含めて検討します。詰め込みすぎると、作業効率も冷気の循環も損なわれます。
拡張性は、事業の成長で保管量が増えたときに、同じ物件で対応できるか、近隣に拡張の余地があるかという視点です。
目先の条件だけでなく、数年先の事業計画まで見据えて選ぶことで、早期の移転や追加コストを避けられます。この3点が、物件選びの土台になります。
設備の状態・冷媒(フロン規制)・省エネ性能
設備の状態と性能も、必ず確認したいポイントです。
まず、冷凍設備が古くないか、メンテナンスが行き届いているかを確認します。老朽化した設備は故障リスクが高く、冷却が不安定になることもあります。
次に、冷媒の種類です。温室効果の高いフロン冷媒は規制強化が進んでおり、2030年に向けて段階的な削減が予定されています。
古いフロンを使った設備では、将来的に修理や冷媒の補充が難しくなる可能性があります。自然冷媒や規制に適合した冷媒を使った設備なら、長く安心して使えます。
さらに、省エネ性能も重要です。電気代を借主が負担する場合、省エネ性能の低い設備はランニングコストがかさみます。これらを確認しておくことが、入居後の安定運用とコスト抑制につながります。
フロン規制については、以下の記事で詳しく解説しているので、ぜひ参考にしてみてください。
▶︎フロン規制とは?R22・HCFCの段階的廃止計画と今後の規制
「借りる」「建てる」「後付け設置」「スポット利用」の比較
冷凍・冷蔵の保管場所を確保する方法は、大きく分けると「建てる」「借りる(設備付き物件)」「借りて後付け設置する」「スポット利用」の4つがあり、それぞれに向き不向きがあります。
自社で建てる方法は、初期投資が大きい一方、立地や設備を自社の運用に合わせて最適化できます。長期的に大量の保管を続けるなら有力な選択肢ですが、需要が読みにくい段階では、初期投資の重さがリスクになります。
借りる方法(冷凍設備付き貸倉庫)は、初期投資を抑えてすぐに使いたい場合や、設備の保守・更新リスクを負いたくない場合に向いています。
常温倉庫を借りて冷凍設備を後付け設置する方法は、自社で建てるのと比べ初期投資は抑えられる一方、設備の設置費用は借主が負担するため、設備付き物件を借りる場合よりは初期費用がかかります。
また、退去時に設備を撤去する原状回復工事が必要になる点にも注意が必要です。自社建設ほどの投資は避けたいものの、冷凍設備付き貸倉庫で条件にある物件が見つからない場合に向いています。
さらに柔軟なのがスポット利用です。シェア型のスポット保管サービス「コールドクロスネットワーク」なら、1パレット・1日単位から、追加費用や造作なしで利用できます。長期契約をせず、必要なときに必要なだけ低温保管を使えるのが特長です。
スポット利用は、繁閑差のある保管や急な需要、短期間だけの保管に適しています。物件探しの手間も契約の縛りもなく、保管した分だけ費用が発生するため、過剰なコストを避けられます。物件が見つかりにくい地域や、急な保管に対応しやすいのも仕組みです。
「建てる」「借りる」「スポット利用」を、初期費用・固定費・柔軟性の観点から比較し、自社の事業フェーズと物量に合った方法を選ぶ、あるいは組み合わせることが、冷凍物流のコスト最適化に繋がるでしょう。
まとめ
冷凍設備付き貸倉庫は、設備投資をせずにすぐ低温保管を始められ、設備の保守・更新リスクも自社で負わずにすむのが魅力です。一方で物件数が少なく、設備仕様や契約条件の確認が欠かせません。
賃料だけでなく、電気代を含めた総額で比較することが大切です。物件は、温度帯・容量・拡張性や、設備の状態・冷媒・省エネ性能を確認して選びましょう。借りる・建てる・スポット利用を状況に応じて使い分けることが、賢い保管戦略につながります。
編集・監修
コールドクロスネットワーク編集部
物流・倉庫業界の実務知識を発信する編集チームです。サプライチェーン領域の専門家、実務経験者、ライターの皆様に助けられながら、 「物流から世界をもっと便利に変える」を共に目指しています。
高田 直樹
物流事業の実務、経営に精通し、現場視点から本メディアの編集方針を監修。
鈴木 邦成
物流、ロジスティクス工学の専門家として、記事内容の学術的正確性を監修。